その日以降、中学を卒業するまで、わたしは「彼」にいじめ抜かれました。こてんこてんにやっつけられました。この10か月間の間にわたしは「彼」から、恐怖心と人間不信と劣等感を植え付けられました。学校のある日は、毎日踏みにじられ抜かれました。地獄のような日々でした。
彼とはクラスが一緒ではありませんでしたが、隣のクラスで、授業が終わるたび、つまりそのつどの休み時間になるとわたしのところにやってきてわたしをいびり、そして昼休みの時間も、そして不幸なことにわたしは彼と同じ部活動(卓球部)でしたので(「彼」はなぜか3年生になってからバスケ部から転部してきました。そしてさらに不幸なことにわたしは部長をやっていて部活動から逃げられなかったのです)、8月一杯で引退するまでの放課後の毎週3回2時間と夏休み中の登校練習でも彼と同じ空間で過ごさねばならず、むろんその間も彼にいびられ抜かれました。
「彼」はわたしを殴りました。けっ飛ばしました。見くだした恐ろしい顔をして、わたしをにらめつけ執拗にわたしをいじめぬきました。わたしのカバンを取り上げ、それを廊下に持ち出し、サッカーでもやるかのようにけっ飛ばされました。メガネもやられました。うばい取られ、それもまたサッカーでもやるかのようにけっ飛ばされました。そのせいで、メガネは傷だらけになりました。 わたしは顔を引きつかせながら、それを取り戻そうとすると、「お前、そんなことしてどうなるかわかっているんだろうな!」、 と言って脅されました。わたしはそうやってにらみつけられると、何も抵抗することができず、恐怖でおびえてされるがままになってしまいました。
いじめは、暴力だけではありませんでした。「彼」は肉体だけではなく、更に、精神的にもわたしを傷つけぬきました。「彼」は執拗に、わたしに「頭が悪い」と呪文のように言い続けました。わたしは、毎日「彼」といる時は常に頭が悪いと言われ続けました。そうしてわたしに「頭が悪い=人間のクズ」という単純な、そして悪質な考えを植え付けたのでした。 頭が悪いとは「彼」にとっては「知能指数が低い」ということでした。以降、常にわたしは「自分は頭が悪い(知能指数が低い)」ということで悩まされました。頭が悪いゆえにダメ人間であり、卑しい人間なのだと考えるようになってしまいました。
具体的には、学校のテストの成績を上げ玉に取られ、そのことで徹底して辱められました。定期テストや実力テストがあるたびに、成績表を持ち出され、「偏差値○○、お前、あたま悪いんじゃないの!」、と言ってわたしを辱めました。 頭の悪いクズ野郎だと言われ続けました。一方彼は学年でおそらく3年間で一度も首位を譲ったことがない位の秀才でした。
「彼」は明らかにわたしを傷つけるのが目的で、わたしをいじめました。「彼」にとっていじめは、金銭を手に入れるといったような手段ではなく、目的でした。わたしの心を徹底して傷つけ、辱めるのが、「彼」の目的でした。彼のいじめの目的はわたしを不幸のどん底に陥れることだったのです。
そして「彼」はわたしに言ったのです、「お前に恐怖心を植え付けてやる!」と。
こうして、いじめ抜かれ、傷つけ抜かれた10か月は過ぎてゆきました。わたしはその間、いつでも、今度こそは復讐してやろうと、決闘してやろうと思っていました。しかし、いつでも「彼」の前に立つと気弱になってしまって何もできなくなってしまうのでした。