05. リハビリを続ける

いじめトラウマを生き抜く方法

過去のいじめで苦しんでいる(いじめ後遺症の)あなたへ。いじめ後遺症うつ病者本人が、自身の、いじめ体験・いじめトラウマ体験・うつ病闘病体験について語ります。いかにトラウマを生き抜くかを考えます。いじめ自助グループ、トラウマ無料スカイプ相談など。

05. リハビリを続ける

傷口を安静にしておく、つまり、安心安全な人間関係の場に身を置くことは、同時にその場において人間関係の練習をしてゆくことでもあります。それは人間関係のリハビリです。

 

リハビリという概念が示すのは、故障した体の部位を治療して安静にさせておくと同時に、そのつどの治癒のレベルに応じて、その部位を練習することによって動かし、以前の機能を取り戻すべく訓練をしてゆくことでもあります。

 

いじめトラウマにおいてわたし達は、過去の精神的・肉体的暴力において、人間関係をつむぐ能力を破壊されてしまったのです。大抵のいじめトラウマ生存者は、それ以後、人間関係で孤立してしまうでしょう。そして傷つけられた自分自身の無様な姿を見て苦しみ、と同時に居場所のない孤立した状態の中で、人間関係飢餓に陥って、息苦しさ・生きづらさを持ち続けるのです。

 

したがって、いじめトラウマからの回復において、人間関係のリハビリをしてゆくことは、人として人間関係の構築・維持の能力を取り戻すことなのです。そしてリハビリの内容は、その都度のレベルにおいて「人間関係を生きてみる」ことなのです。

 

わたし達は治療・援助を受けると同時に、まずはそこで提供された安全な場所を利用して、人間関係を構築・維持する練習をしてゆき、最終的には治療者や援助者を離れて、自ら社会の中へはいって行って新しい人間関係を築き、「居場所」(※)を作れるようにならねばならないのです。なぜならそれが人がこの現世で生きてゆくということだから。

 

それが社会的な意味で、いじめトラウマから回復するということなのです。そして精神的な意味でのいじめトラウマからの回復とは何度も言っているように、自分をかけがえのない存在としてあるがままに愛し、誇りを持って生きることができるようになることなのです。そしていじめトラウマを克服するということは、精神的な意味でも、社会的な意味でも、回復することを意味しているのです。そういう能力を取り戻すということです。

 

(※)この「居場所」とは必ずしも「職業的な場」であるとは限りません。

 

いじめトラウマの回復には、いじめトラウマの治療と同時に、人間関係のリハビリをしてゆかなければならないということを、肝に銘じてください。そして人間として生きる以上は、どんなに孤立しているように見えても、わたし達は不断に人間関係の中にさらされているのです。全く人間関係のない人間など存在しない・存在しえないからです。

自分の回復の程度に応じて、人間関係のリハビリをしていってください。それは「リハビリ」という自覚をもって、その都度の人間関係を生きてゆく、ということです。そして人間関係でつまずいたらすぐに相談できる援助者(治療者)とつながってください。人間関係を相談できる援助者がいてはじめて「生の人間関係」は「人間関係のリハビリ」となるのです。

 

まずは医師・病院との人間関係、次に心理カウンセラーとの人間関係、その他援助者との人間関係、家族との人間関係、仲間との人間関係、学生ならば、学校や同級生との人間関係、働いている方は、職場の人間関係、その他、趣味の場での人間関係、

 

そして、すべての人間関係の根底にあって、究極的な意味で他者であるところの自分自身との人間関係。

 

これらすべての次元・段階において、人間関係のリハビリが必要なのであり、人間関係のリハビリは不断のリハビリなのです。リハビリをしなければ、損なわれた機能は、再び使えるようにはなりません。だから人間関係のリハビリを続けてください。

 

しかしリハビリといっても、人間関係は、どんなものであっても、それ自体本番です。そしてどんな実際の人間関係においてもリスクはあります。つまり人間関係で傷つく可能性があるのです。たとえ医師との関係においても、この人間関係のリスクは完全には回避できず、必ずなんらかのリスクはあります。

 

わたし達は人間関係で深く傷ついているのですから、再び人間関係を持つことはとても怖いし、勇気がいります。リスクがあるといわれて怖気づいてしまうかもしれません。しかしそもそも「人生」というものはリスクのあるものなのです。リスクのない人生、つまり安全を保障された人生など存在しないのです。わたし達は、生きている以上、リスクを完全に避けることなどできないのです。リスクのある中をなんとか生き抜いてゆかねばならないのです。そのことをしっかり覚えておいてください。

 

そして人間関係の傷は、やはり人間関係の中で癒してゆくしかないのです。 一人で閉じこもっているだけでは、回復することはできないのです。したがってわたし達は常に恐怖心や不安と闘いながらも、この人間関係のリハビリを行ってゆかなければならないし、そもそもこの恐怖心や不安を感じていること自体が、すでにわたし達が人間関係として生きていることの証なのです。

 

無理をせず、自分なりのペースで、リハビリを続けていってください。それは不断のリハビリなのです。

 

前に戻る |  続きを読む

トピック⑦トラウマを生き抜く