27. 精神科に行ったことの意味・・・はじめての告白

いじめトラウマを生き抜く方法

過去のいじめで苦しんでいる(いじめ後遺症の)あなたへ。いじめ後遺症うつ病者本人が、自身の、いじめ体験・いじめトラウマ体験・うつ病闘病体験について語ります。いかにトラウマを生き抜くかを考えます。いじめ自助グループ、トラウマ無料スカイプ相談など。

27. 精神科に行ったことの意味・・・はじめての告白

精神科に行って伊藤先生に過去のことを話したということは、それだけで非常に大きな意味がありました。つまり、それによって僕はやっと「はまっている状態」から抜け出ることができたのです。

 

「はまっている状態」とは、自分はクズであると本当に思っている、しかしそれでは、どうやって生きて行っていいのか分からない、だからだれかに肋けてもらいたい、しかし自分のことを本当にクズだと思っているので、そのことを人には絶対言えない、という状態のことです。

 

これは常に循環していて、突破口がないのです。ぼくはこうした「はまっている状態」で、7年間過ごして来たのです。

 

そして、精神科に行って伊藤先生に話せたということは、この「はまってる状態」を突き破ったことを意味するのです。やっと過去のことを人に話すことができたのです。そして、その人は僕を軽べつするどころか、同情してくれ、尊重してくれたのです。

 

僕が人にそのことを言えなかったのは、それによって軽べつされるのではないかという恐れをいつも抱いていたからです。再び踏みにじられるのではないかと思っていたからです。なぜなら僕はクズだからです。けれども伊藤先生は僕を軽べつしませんでした。僕をいたわってくれたのです。僕が長い間自分はクズだと思っていたことを初めて直接否定してくれたのです。これが僕にとって一番の恩恵でした。

 

僕の過去を知っている人間がいる、そしてその人は僕を軽べつしない、このことが本当に僕にとって有り難いことなのでした。もちろんそれがすべての解決ではありませんが、7年もの間僕の心の中を支配し、苦しめて来たこの「はまっている状態」を突き破れたのは本当に画期的な事だったのです。「彼」の呪縛からやっと解き放たれ始めたのでした。

 

しかし、ここで忘れてならないのは、僕が強くなって弱さを克服して、傷が癒えて、それで過去のことを人に話せたのではないということです。逆に「傷」がますます悪化し、苦しみがピークに達して、それでどうしようもなくなって話したということなのです。7年経ってもその苦しみは決して和らぎはしなかったのです。

 

そしてもうひとつ忘れてはならないことは、僕と伊藤先生との関係です。僕と伊藤先生とは医師と患者という特殊な関係(治療者・被治療者関係)のうちにあったのです。もし対等な立場の人間だったら到底それを言えなかったように思います。

 

患者の身の上話を聞いてその苦しみから救ってやるのが精神科医の務めであるはずだと思っているから(※)自分の過去を言えたのです。だから、もちろん伊藤先生に過去のことを言えたということは僕にとって本当に大きいことだったのですが、そんな特殊な関係ではなく対等な一人の人間に対してもそのことを言うことが、僕にとってさらなる課題となりました。
もちろんこんなことはたくさんの人に言うべきことではありません。しかし、僕の心の傷をいやすために、もう一人対等な人間に過去のことを話すということは、僕にとってどうしても必要なことなのでした。そして、それが実現されるにはそれから1年と半年の年月を待たねばなりませんでした。

 

(※)これは当時わたしが精神科医(医師)に対して思い込んでいた理想のようなものです。 しかし現実の精神科医は、かならずしもそうではないし、精神科医がそのように自己理解しているかどうかもあやしいです。精神科医も、ただの人間だし、脳神経と薬のことは専門家かもしれませんが、人生の達人でも、人格者でもないのですから。一番いい医者とは、謙虚で温厚な人柄のことです。医師にとってそれが最善のことだし、一方で医師にとって一番むずかしいことなのだと思います。

 

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