いま(1995年2月現在治療をはじめて3年がたった)になって考えてみると、「うつ状態」は僕にとって救いでした。
「うつ状態」がピークに達することによって、僕は精神科のことを知り、そして、初めて過去のことを人に言うことができたのでした。そして、また、苦しみがピークに達することによってやっと僕は友達を作ることができ、改めて大学生活が始まったのでした。そして、大学2年の5月以降、この2年間は小林先生と伊藤先生のお陰で、過去の問題については飛躍的な年月となりました。
中3のとき、彼によって植え付けられたゆがんだ幻想を少しづつ突き崩して行くような日々でした。
この2年間で僕は信じられない位内的に成長し、また解放されました。周りの目から見れば、ただのほほんとしていただけに見えたかも知れませんが、僕にとっては飛躍的な年月でした。そしてこの飛躍へと導いくれたのは「うつ状態」だったのです。しかし、もしこれが救いだとしたら、何と過酷な救いなのだろうと思います。
苦悩がピークに達したこと(※)は僕にとっては(後になって考えてみると)救いだったのです。救いというにはあまりに過酷な救いであったと思います。生きるとは本当に大変なものだと思い知らされました。
(※) 苦悩がピークに達すること、あるいは、症状がピークに達することを、「底をつく」、と表現したりします。
そしてこの底つき状態が、トラウマ精神疾患者の闘病の過程の中で新たなる展開への出発点になることがしばしばあるのです。