13. 心の傷・・・人間は皆クズである

いじめトラウマを生き抜く方法

過去のいじめで苦しんでいる(いじめ後遺症の)あなたへ。いじめ後遺症うつ病者本人が、自身の、いじめ体験・いじめトラウマ体験・うつ病闘病体験について語ります。いかにトラウマを生き抜くかを考えます。いじめ自助グループ、トラウマ無料スカイプ相談など。

13. 心の傷・・・人間は皆クズである

僕は7年もの間、自分をクズだと思って生きて来ました、ダメ人間だと思って生きて来ました。そして、そのことがもっとも僕を苦しめたことですし、そのことが僕の苦しみを長期化させた最も大きな原因の一つでした。

 

だから伊藤先生との話し合いの中でも、僕はクズでどうしようもない奴なんです、と言うことを、うつむきながら何度も訴えました。それに対し伊藤先生は

「君はクズではない、もし君がどうしようもない人間なら、私はあなたの相手などしない。君がクズでないと思うから、わたしは君の治療をしているのです。」と何度も何度も僕に言ってくれました。

 

そう言われることによって、今まで絶対だと思っていたことが、少しづつ突き崩されて行きました。つまり、自分はクズだ、という絶対的だと思われていた事実がやっと相対化されていったのです。そして、今まで信じていたことは、ゆがんだ認識なのてはないかとやっと思えるようになりました。つまり、それは「傷」だったのだと初めて気づいたのです。しかし、これは結構大変なことなのです。本当に傷の中にいる人間は、自分が傷ついているということを自覚すらできないのです。傷の中から出ることによって、初めてそれが傷であるということが分かるのです。僕はそれが傷であると分かるのに7年もの年月を要したのですから。

 

逆に今度は伊藤先生の方が僕に、「クズとは一体どういう意味なのですか。」と尋ねてきました。

自分自身を指すものとして無意識の内に使っていたので、「クズ」とはなんですか、と改めてきかれてみると、すぐには答えられませんでした。それで自分でもあんまりはっきりしないまま、

「生きている価値もない、ただ存在しているに過ぎないもの、ですかね」と答えました。

すると伊藤先生は、

「それならみんなクズなんですよ、人間もただ存在しているに過ぎないのですよ、そういう意味でみんなクズなのですよ。」と言われてしまいました。

 

その日はそれ以上話は発展しなかったのですが、診察が終わった後も、伊藤先生が言った「人間はみんなクズだ」と言うことについて考えていました。

 

こうして幾つかの発見とテーマをもって、再び小林先生のところに話しに行きました。

僕は小林先生に言いました。

「僕は最近、精神科医との話し合いなどを通じて初めて自分が傷ついているということに気付きました。どう傷ついているかというと『じぶんはクズである、と信じている』という風に傷ついているのです。僕は今まで自分はクズだ、ダメ人間だと思って生きて来たのです。そして、それが真実であると信じ込んでいたのです。だからとても苦しいでした。自分のことをクズと本当に思って生きているなんて、苦しいに決まっています。しかし、それは過去の体験によって植え付けられたものだったのです。それが真実であるということを思いこまされてしまったのです。そして、それが真実ではないということが最近やっと分かりかけて来ました。つまり、僕はクズである、というのは真実ではなく、ゆがんだ認識なのだと、そのゆがんだ認識こそ、僕の心の傷そのものなのだということに僕はやっと気付いたのです。今まで絶対的だと思っていた自分はクズだという事実がやっと相対化されてきました」。

 

すると小林先生は、伊藤先生と同じように、

「でも下村君は決してクズじゃないですよ、外面的に見ている限りでは、結構うまくいっているように見えますよ。下村君はもう平均より先に進んでしまっていますよ」と言ってくれました。

僕がうまく行っているか、あるいは進んでいるかは別として、小林先生にクズではないと言ってもらえたことも、やはり僕にとって大変うれしいことでした。そのことが更に、僕の傷と、それがゆがんだ認識であるということをはっきりさせてくれました。

 

そして伊藤先生に言われた「人間はみんなクズなのですよ」ということについて僕は小林先生に次のように言いました。

 

「確かに人間はみんなクズなのかもしれません。それは真実だと思います。それを内的な成長の過程を通して悟るのなら、大変喜ばしいことだと思いますが、そんなことを全く考えたことのなかった精神が、外的な力(虐待)によって一気にクズに引き落とされてしまった場合、これは悲鳴を上げるくらい辛いことなのですよ。頭で観念的に『人間は皆クズだ』と了解することは簡単ですが、それを体験するということ、つまり、クズになってしまうということは大変なことなのです。」

これについて小林先生も「いじめ」の事実は知らせていてはいませんでしたが、「そうですね]と同意してくれました。

 

前に戻る |  続きを読む

トピック④うつ病闘病体験に戻る