33. 哲学科志望

いじめトラウマを生き抜く方法

過去のいじめで苦しんでいる(いじめ後遺症の)あなたへ。いじめ後遺症うつ病者本人が、自身の、いじめ体験・いじめトラウマ体験・うつ病闘病体験について語ります。いかにトラウマを生き抜くかを考えます。いじめ自助グループ、トラウマ無料スカイプ相談など。

33. 哲学科志望

第一志望の大学は、現役と同じく上智大学でした。その理由はさきに述べたとおりです。しかし、どの学部、どの学科に行くかについては迷いました。現役の時は国文科にしましたが、本当に国文学がやりたいのかという疑問が残りました。実際受験勉強ばかりやってきた人間が、どの学部をやりたいのかはっきり分かるなどということはなかなか難しいのです。なぜなら学問と受験勉強とは違うからです。いくら国語が得意でも、それは必ずしもその人が文学や思想をやるのに適しているとはいえないのです。問題を解くテクニックは持っていても、それは思想を読み解きかつ自分で考えるという学問的な営みとは必ずしも一致しないのです。それは国語だけでなく、外国語でも、社会でも、数学でも言えることです。学問と受験勉強とは次元の違うものなのです。だからわたしも大学は決めたとしても、どの学科にゆけばいいのか分からなくて悩みました。今の高校(少なくてもわたしの高校では)は受験勉強はしっかりやらせるくせに、大学に行ったら生徒が一体何をやるのか、ということについてはほとんど指導してくれないのです。だから結局大学のネームバリューと偏差値で志望を決めることになってしまうのです。そして、今だから言えることですが、多くの大学生が自分の学科の勉強に関心が持てずサークルやバイトに走ってしまうのです。そうなってしまうのもそもそも自分の志望する学科が一体何をやるのか、について分かっていなかったというところから起きてしまうのだと思います。偏差値や受験テクニックの情報ばかり与えて、その学科は一体どのようなことをやるのか、学問とはそもそもなんなのかという根本的な問いをないがしろにしてしまっていることに因を発していることなのだと思います。

 

そうした状況の中でわたしは、志望を決めなければなりませんでした。そうしてなんとか3つに絞りました。再び国文科、心理学科、そして哲学科です。わたしはこの3つのうちのどれにするかで迷いました。わたしが大学に行って学問をやるモチーフの一つには、今の自分の苦しい状況、そして過去を何とか清算したいという思いがありました。だから自然と思想や精神科学のほうへ関心が向いたのです。このうち国文科と心理学科はある程度やることは見当つきました。しかし、哲学に関しては一番興味をひかれると同時に、一体何をやるのかわからないといった感じでした。そして、そのわからなさがかえってわたしの関心を引き寄せました。そうした時わたしはある本と出会いました。竹田青嗣さんの『哲学入門』でした。それまでも何冊か哲学についての本を読んでみたのですが、難しくて余りよくわかりませんでした(※1)。しかし、この本は分かりやすくて非常に面白く感じました。作者自身の哲学との出会いから始まって、自分の哲学観が分かりやすく書いてありました。また古代、中世、近代、現代という哲学史の流れをこれも分かりやすく解説してありました。そしてわたしの興味を一番引いたのは「まえがき」に書いてあったことでした。そこで竹田さんは、哲学とはなにか、という問いに対して次のように答えていました(※2)。

 

①物事を自分で考える技術である。

②困ったとき、苦しいときに役立つ。

③世界の何であるかを理解する方法ではなく、自分が何であるかを了解する技術である。

 

これらの答えはどれもわたしに関心を持たせました。特に②の答えには強く魅かれました。何とか今の苦しい状況を打開するために、最も根本的かつ本質的なのは哲学なのだとそのとき思いました。続けて竹田さんの本を2冊ほど読みました。そうして、さらに哲学に対する関心が高くなりました。

 

こうしてわたしはこの本をきっかけに、大学で全力を尽くしてやるのは哲学だと思いました。そして改めて、第一志望を上智大学文学部哲学科にしたのでした。

 

(※1) 哲学のとっつきにくいところは、入門書と呼ばれているものでさえ、やっぱりわかりにくい、難しいということです。しかし一方で、わかりやすい哲学入門書は信用ならないともいえますし、相当レベルを下げなければ実現しないのですが、そんなにレベルを下げたら哲学じゃないじゃないか(たとえ入門書であっても)、というジレンマがあるのです。

(※2) 竹田さんは、このように難しい内容をわかりやすく言って見せることにかけてはずば抜けてすぐれた才能をもっていると思います。

 

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