18. 辛かった思い出

いじめトラウマを生き抜く方法

過去のいじめで苦しんでいる(いじめ後遺症の)あなたへ。いじめ後遺症うつ病者本人が、自身の、いじめ体験・いじめトラウマ体験・うつ病闘病体験について語ります。いかにトラウマを生き抜くかを考えます。いじめ自助グループ、トラウマ無料スカイプ相談など。

18. 辛かった思い出

とっても辛いことがありました。戸山祭の準備をしていた時のことなのですが、その日は格技棟(体育館を一回り小さくしたような、体育用のスペースです。)で稽古をする予定になっていました。授業が終わり格技棟に向かっていると、途中で白井君に会いました。白井君はわたしよりも早くそこへ来ていたらしいのです。すると彼は、「格技棟で関係ない連中が遊んでいるから、出ていってもらって、僕も後で行くから」というのです。わたしは不吉な予感がしました。不安な思いに駆られながら格技棟に入ってみると、果たして5~6人のグループが2組いて、バドミントンをして遊んでいました。その時も演劇部は、格技棟を稽古場に使用する許可を執行部(生徒会)からもらっていました。だから当然演劇部以外の人を追い出す権利を持っていました。

 

わたしが入ってきたとき、演劇部員は一人もいませんでした。わたしはドキドキしながら、何気ない顔をしてスペースの中央にまで来て、壁に沿うようにして座りました。彼らはわたしのことなど気にも留めないような様子で遊んでいました。さらに悪いことには、その1つのグループの1人はわたしの中学校の知り合いで、わたしのことをいつもバカにしていた人でした。わたしはドキドキしながら、彼らにどいてもらわなくては、どいてもらわなくては、と思いました。しかし、話してきたとおり、わたしは劣等感と恐怖心の塊だったので、それを言うのにはやはりかなり勇気が必要でした。しかし、わたしは部長であるし、当然の主張なのであるから言わなければいけないと思いました。それで、やっと勇気を振り絞って、1つのグループに言いました。

 

「これからここは演劇部で使うのでどいてもらえませんか」。

 

ビシッと言うつもりが、声に出したとたん、恐縮したような、こびたような言い方になってしまいました。彼らは一瞬止まりましたが、すぐにまた遊び始めました。あまりに弱弱しく言ったので、彼らにはわたしが言ったことは伝わらなかったようでした。ほとんど無視されて、再び遊び始められました。当時のわたしにはそれが限界でした。本当はさらにどくように警告しなければならなかったのですが、わたしはもう引いてしまいました。再び壁に沿って座り、彼らが遊んでいる様を見ているしかほかありませんでした。非常に情けないでした。なんて気の弱い男だろうと、自嘲の念が湧きおこりました。しかし、もうわたしは勇気がなくて、それ以上のことを言うことはできなかったのです。

 

そうしているうちに、後輩の女子たちが少しずつ集まって来て、練習し始めたのですが、やはり中央で遊ばれているのが邪魔でした。だからやはり彼らにどいてもらわなければならないと強く思いました。しかし、逆にそう思えば思うほど恐怖心が強くなっていって、身動きすることができなくなってしまったのです。そして、白井君に早く戻ってきてほしいと思う反面、この状況を見たらまた怒られるだろうな、とも思いさらに苦しくなりました。

 

そういう内面的に苦しい状況の中、一方で外面的にみると、何もしないでボケっとしているような様子でいた時に、白井君は戻ってきました。棟に入って遊んでいる人たちがまだいるのを見て、案の定、彼は怒った顔をしてわたしのところにやってきました。「どうしてどいてもらわないんだ」と強い口調で言われました。わたしは心の中で叫びました。「どいてくれとわたしは頼んだのだ、でも彼らはどいてくれなかったんだ、しかもわたしは恐怖心があるのでそれ以上言うことができなかったんだ。ボケっとしていたんじゃないんだ、白井君が来るまでずっと苦しかったんだ」。しかしそんなことは白井君に言うこともできずに、ほとんど何も言うことはできないので、またいつものようにごまかし笑いをして、顔を引きつかせていました。白井君はあきれたようにわたしを見ると今度は遊んでいるグループのところに行って、「これから演劇部で使うから、どいてくれないか」と今度はビシッと言うと、今度も彼らは一瞬止まりましたが、今度は白井君が彼らの前で毅然として立って、やめるまでどかないよ、という態度を示したので、仕方なさそうに彼らは遊ぶのをやめ、帰ってゆきました。白井君は自信をもって堂々と自己の権利を主張したのです。するとまたわたしのところに戻って来て、「お前だらしないなあ、オレか加藤がいなかったならどうするつもりだったんだよ」と言いました。彼はわたしの内面的な苦悩には気づいていないようでした。わたしはそう言われると恥ずかしくて、情けなくて本当に辛く思いました。彼には頭が上がりませんでした。とにかく笑ってごまかすよりほかしょうがありませんでした。その後さらに部員が集まって稽古ができたのですが、白井君は今日のわたしの態度にはよっぽどあきれたと見えて、今度は加藤君にもさっきあったことを話していました。わたしはそれを傍で聞きつつ、心の中で頼むからもうそのことは言わないでくれ、と叫んでいました。しかし、表面上は何も言えないで、うっかりしてたみたいな顔をしてごまかすよりほかしようがなかったのでした。

 

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