うつ病には「うつ」としての苦しみと同時に、外界との関係における苦しさというものがあります。
つまりうつ病という病気は非常に分かりにくく同情されにくいものなのです。だから僕が苦しんでいても、それを知らない人は、怠けているなどと見るのです。怠けてなどいないのです。ずっとずっと病気と闘っているのです。その病状を客観的に人に示す手立てがないので、なかなか人にそれを病気と認めてもらえないのです。
さらに悪いことに自分自身までが、自分は病気ではないのではと疑ってしまうことがあるのです。これは実は病気なのではなく、ただ自分がダメ人間なだけなのではないかという風に思い込んでしまうのです。そういうときは最悪です。他人も自分も病気とは認められないということは、例えば熱が40度あるのに、自分でもそれを病気と思えないで早く起きて仕事に行こうとするのと同じことであり、なおかつ他人も、寝込んでいる人に対し、「怠け者、しっかりしろ」と言うのと同じことです。熱が40度あるのに仕事をしようとする人はないでしょう。もしそういう人がいたら、それは根性があるというよりも無謀というものです。熱が40度ある人に「怠け者、しっかりしろ」とは言わないでしょう。それもまた、厳しいというところを通りすぎて、無茶と言えるでしょう。そんなことをしたらかえって症状が悪くなってしまうのではないでしょうか。
それがうつ病においては、そうした普通の病気に対する同情がしてもらいにくいのです(※)。調子が悪くて横になっているのに「怠け者」と言われるし、自分自身もただ怠けているだけなのか、と不安になってくるのです。
だからうつ病者は、常にこうした病気そのものの苦しさと、外界との関係(無理解)における苦しさに耐えなければならないのです。
(※)同情してもらえないということは、病人として配慮してもらえないということです。