09. いじめトラウマの抜け出せないはまった状態

いじめトラウマを生き抜く方法

過去のいじめで苦しんでいる(いじめ後遺症の)あなたへ。いじめ後遺症うつ病者本人が、自身の、いじめ体験・いじめトラウマ体験・うつ病闘病体験について語ります。いかにトラウマを生き抜くかを考えます。いじめ自助グループ、トラウマ無料スカイプ相談など。

09. いじめトラウマの抜け出せないはまった状態

わたしは過去の体験において、お前はクズだ、卑しい人間だ、というように強烈に自己否定されてしまいました。そうして実際に自分はクズだと信じ込んでしまいました。それがわたしにとって最も悲劇だったことです。

 

自分をクズだと思っている人間はどうやって生きて行っていいのか分からないのです。しかし、自分のことを本当にクズだと思っている人間は、それを人に言うことは決してできないのです。だから、どうやって生きていっていいのかわからないが、それを人に相談したり尋ねたりすることができないという、そういう「はまった状態」になってしまったのです。そのことがわたしの苦しみを長期化させることになった一番の原因でした。

 

わたしがクズになってしまったこと、そのことがわたしにとって一番苦しいことでした。自分を被害者だと思えるうちはまだましなのです。なぜなら「被害者」という言葉のうちには、自分は正しいのに不当に迫害を受けているという意味が必然的に含まれているからです。自分は正しい、つまり自己肯定しているのです。しかし、わたしの場合は、被害者意識を超えて、自分は正しくない、ダメだ、卑しいという意識が植え付けられてしまったのです。つまり、いじめを受けてもそれは自分のせいだ、自分が卑しいからいじめにあうのだと考えるようになってしまったのです。

 

わたしは長い間人に踏みにじられるために生まれてきたのかと思っていました。それくらい徹底して自己否定されてしまったのです。つまり、わたしはもう自己肯定(弁解)する余地がない位に(少なくともその当時)自己否定されてしまったのです。それがいじめというものを通して、わたしが体験したことなのです。

 

自己(自分)意識の根底にあるのは自己肯定です。自己肯定とは、自分という存在を何らかの意味で価値あるものとしてあってよいとする、ということです。つまり自己は、自己を意識するかぎりにおいて、自分という存在を肯定(あってよい)しているのです。例えば、もしある教師が自分のことを「先生」という意味・役割で価値あるもの(資格あるもの)としてあってよいと肯定していなければ、教壇の前に立つことはできないでしょう。自分を「先生」として肯定しているからこそその場にいれるのです。だから普通多くの人は皆、何らかの役割において自己肯定しています。

 

ところがまた当然多くの人は、大なり小なり、現実によって自己否定(自己価値を無いものとされること)された経験を持っているのです。その自己否定の経験のことをここでは「傷」と言います。もちろんどんな人でも、傷の一つや二つあるものです。しかしわたしに言わせれば多くの場合、その自己否定の経験は部分的なものなのです。人にある点において自己否定されても、人はすぐに別のところに自己肯定の可能性を見出し、それによって否定されたところを補おうとするのです。例えば、勉強ができないと友達にバカにされた人は、運動の方に自己を肯定する可能性を見出します。ブスだといわれた女の子は、性格で自己を肯定しようとします(※1)。

 

このように、多くの人は自己否定の経験を持っていますが、それは部分的なものであって、その他の点で自己肯定することにより、それを補っているのです。しかし、しばしばわたしの場合がそうであるように、もう自己肯定する余地がないくらいに全面的に自己否定されてしまうことがあるのです。しかし、自己肯定が自己(自分)意識の前提になっているかぎり、完全に自己否定しているはずはありません。だから根本的にはわたしとて自己肯定していたはずです(当時のわたしにも自己(自分)意識があったのだから)。しかし、それはあえてここでは「意識の下」でのことと言いたいと思います。つまり、「意識の上」ではもう自己肯定する余地がないくらいに自己否定されてしまった、ということだと思います。つまり、当時のわたしはどこにも自分のよさ・価値を認めることができなかったのです。

 

(※1) しかし実際は、こればかりではないようです。むしろ誰かに何かを否定されても、そのことを無視して依然としてその価値を肯定し続ける人のほうが多いようです。しかし愚直なわたしはブザマに「彼」の前にはいつくばった自分を無視することはどうしてもできませんでした。つまりそんな自分に価値を見いだせなくなっていたのです。

 

以降6年間ものあいだ、わたしはこうした「はまった状態」の中で苦しみ続けなければなりませんでした(※2)。いじめトラウマというトンネルから長期間(およそ13年間)にわたって出られなかったのは、以上のような状態にあったからです。 もっと早く人に相談していればこんなにも長期化することはなかったのですが、その、人に相談すること、人に心を開くことそのことが、恐怖心を植え付けられたわたしにとっては最も困難なことだったです。 だから長期間にわたって、トンネルの中で苦しまなければならなかったのでした。

 

(※2) この「はまった状態」は7年後、ついに精神科に受診することによってはじめて破られることになったのです。

 

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