うつ病は何にもまして孤独なものだが、孤独とは正反対のものをはぐくむ。私はうつ病になったおかげで、より愛し、より愛された。それは、本書の取材を通して出会った大勢の人々にも共通するものだった。うつ病の友人や身内のために何ができるだろうかと、大勢の人に尋ねられたが、私の答えはきわめて簡単だ。彼らの孤独をなだめなさい。一緒にお茶を飲むのでもいい、ゆっくりおしゃべりするのでもいい、そばに座って静かに同じ部屋で時を過ごすのでもいい、そのときの状況に応じてどのような手段であってもかまわない、ただそれをしなさい。そして、強い意志でもってやり遂げてほしい。
「そこで私も心を決めました。私は彼らと一緒にここにいるし、これからもずっと一緒にいる。彼らのなかで私一人だけがエイズではなく、やつれはててもおらず、死にかけてもいないけれど、彼らの行動や存在をありのままに受け入れられる人間として、つねにここを訪問していくんだって。だからその日の午後はただそこにいました、おしゃべりをするわけでもなく。きちんと気を配りながら、無条件に、その場にいることが彼らのためになるのです。」
(『真昼の悪魔』 第十二章「希望」 原書房 堤理華訳)