「そうはいっても、病気になる前の私は、今とは比べものにならないほど偏屈だったし、信じられないほど横柄だったし、弱さについて何一つ理解していなかった。こうした経験をくぐりぬけてきた結果、私はずいぶんましな人間になりました」
「私たちは、楽園を見つけるために地獄を通り抜けてきたの」とティナ・ソネゴはいう。「私が得た報酬は、とても単純。以前はまったく理解できなかったことが、今は理解できるっていうこと。そして今は理解できないことも、いつかわかるときが来るでしょう、もし大切なことであれば。今日の私を作った張本人はうつ病よ。私たちが得たものは、すごく静かですごく饒舌ね」
「うつ病は私の人生の障害物じゃない。それはもう、どこか私の一部分になっていて、人生を歩んでいくあいだ、私が一緒に運んでいくものなの。そしておそらく、さまざまな地点で私を助けてくれるにちがいないわ。どのようにって?そんなことわからない。それでも私は自分のうつ病を、その贖いの力を信じている。私はとても強い女よ。それはうつ病によって培われたものでもあるわ」
「うつ病は、普通の人には想像もつかない範囲まで優しさと許しを広げていく力を、私に与えてくれました」
(『真昼の悪魔』 第十二章「希望」 原書房 堤理華訳)