わたしは、いつもあしたこそは「彼」に会ったら、復讐してやろうと思っていました。今日こそは、あいつをやっつけてやろうと思いました。
しかし、「彼」の前に立つと、「彼」ににらみつけられると、もう震えあがってしまい、どうすることもできないのです。無抵抗になってしまうのです。
わたしは自分で、オレはなんてダメな奴なんだ、なんて弱い奴なんだ、と思いました。自分のダメさを嘆きました。自分の弱さに失望しました。本当に自分は情けない男だと思いました。ダメ人間だと思いました。
そして、もうどうしてよいかわからないのでした。
************************************
わたしは、自分自身でさえ守れなかった自分に失望しました。複数の人間にではなく、たった一人の人間に、しかも対等な立場にいる人間に、ここまで踏みつけにされて何もできなかった自分に失望しました。何か特別な弱みを握られているわけではないのに、相手に屈服した自分に失望しました。
************************************
わたしはたった一人の人間にいじめられたのです。世間では、集団いじめがはやっているとか。複数の人間から暴力をふるわれれば、屈服せざる得ないかもしれません。
しかし、わたしはたった一人の人間から踏みにじられたのです。たった一人の人間におびえきっていたのです。なんというこのわたしの気の弱さ。
わたしはここまで気の弱い自分に、傷つけられる以上に失望しました。
こんなに弱いダメ人間であると知ったときわたしの将来は、ほとんど絶望的に見えました。
こんな弱い人間がどうして生きて行けるのだろう、それが長い間わたしを最も苦しめたことでした。