36. カミングアウト・・・是非を問う

いじめトラウマを生き抜く方法

過去のいじめで苦しんでいる(いじめ後遺症の)あなたへ。いじめ後遺症うつ病者本人が、自身の、いじめ体験・いじめトラウマ体験・うつ病闘病体験について語ります。いかにトラウマを生き抜くかを考えます。いじめ自助グループ、トラウマ無料スカイプ相談など。

36. カミングアウト・・・是非を問う

しかし、これもまた勇気のいる行為でした。

 

なぜかと言えば、そこは養成所なのです。そこはけい古する場なのです。その場にあってけい古できないということはあってはいけないことなのです。例えば大学の授業だったらそんなことは問題になりません。別に僕がいなくてもいても、先生は勝手に講義をするし生徒もまた勝手に勉強するだけです。僕の存在などほとんど関係無いのです。

 

しかし、先に述べたようにそこは養成所であり、互いにけい古する場なのです。塾生の数も10人前後なので、一人の塾生の存在は大きいのです。一人の塾生がやる気の無さそうな疲れた顔をしているのは周りにとってあまりいいことではありませんし、そんなことはしてはいけないことなのです。なぜならそこはけい古場だからです。みんなが一生懸命やっているのに、自分だけじっとしているというのは結構つらいことでもあるのです。

だから11月最後の日曜日だったと思いますが、けい古の終わる直前師匠と塾生みんなの前で僕がこのけい古場に存在し続けることの是非を問うたのでした。

 

僕は改めて次のようなことを言いました。「皆さんの中には知っていらっしゃる人もいると思いますが、ぼくはいま「うつ状態」という精神病に侵されています。そして、その結果もう皆さんと同じようにけい古することは出来ません。進歩どころか現状維持も出来ず、ただ下降せざる得ないのです。病気が治るまでは下降するよりほかないのです。この下降せざる得ないということは不可避的なものであって、僕の意志とはかかわりなしにそうなるよりほかしょうがないのです。だから僕はそういう状態である自分を皆さんに承認してもらいたいのです。もし承認してもらえるならば、まだ僕はここをやめたくないので、いさしてもらいたいと思います。もし承認してもらえないならば、これも不可避的であってやめざる得ないと考えています。みなさんどうでしょうか?」

 

およそこのようなことを言ったと思います。とても緊張しましたが、自分の言いたいことはほぼ言えたので後はもうどうにでもなれという気持ちでした。

しばらく沈黙が続いたのですが、もうひとつさらに付け加えて言いました。「皆さんの中に、下村は根性がないという人もいるかも知れません。だれだって落ち込むことはあるんだ、それでもみんな頑張ってやっているんじゃないか、という風に非難する方もあるかもしれませんが、それは的外れです。なぜなら僕の病気は、その「根性」そのものが病気なのです。「根性」とか「やる気」と言ったものが病気である以上、その病気を「根性」では克服できないのです。もしそれが出来たとしたら、もうそれは病気ではないのです」。

 

再び沈黙がありました。 そしてしばらくして師匠は次のように言ってくれました。

「下村の病気のことは前から聞いていたのでオレはもう承知ずみなんだ、それがどうしようも無いということも、どうやら本当らしいんだ。どうだみんな、下村がいてもかまわないだろう」

-沈黙-

「第一そんなこと言ってみれば互いにみんな欠点もっているんだから、お互い様だろう、そんなこと言っていたらやって行けないだろう。どうしてもいやと言う奴はいるか」

-沈黙-

「よしそれじゃあ下村はいてもいいということにするぞ、もしここでは言えないという奴がいれば、あとでこっそりオレに言ってくれ」。

 

こうして僕はけい古場にいることを許されました。幸い陰で僕のことがいやだと言って来た人もいないようでした。

 

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