35. 稽古場というもの

いじめトラウマを生き抜く方法

過去のいじめで苦しんでいる(いじめ後遺症の)あなたへ。いじめ後遺症うつ病者本人が、自身の、いじめ体験・いじめトラウマ体験・うつ病闘病体験について語ります。いかにトラウマを生き抜くかを考えます。いじめ自助グループ、トラウマ無料スカイプ相談など。

35. 稽古場というもの

日曜塾についても病気のことをみんなに話さざる得なくなりました。

 

初めの1年間くらいは、それなりにけい古もでき、少しは進歩もありました。しかし、大学2年の3月以降は実質的にはほとんどけい古ができない状態になりました。

 

それでも、3、4、5月ぐらいまでは2月までの勢いで何とか他の塾生並にやれたのですが、もう8月を過ぎるころには下降の一途をたどることになってしまいました。何とか進歩しないまでも、現状維持だけでもできればと思っていましたが、それも「うつ状態」の猛威の前ではどうしようもありませんでした。そうして11月の終わりごろには、「塾生」としてやって行くには限界になってしまったのです。

 

ここで少しけい古場というものについて書いておきたいと思います。けい古場とはみんながけい古する場のことなのです。自分が演技したものに対しコーチが「だめ」を出すというだけがけい古ではないのです。自分に対する「だめ」と同時に他人に出された「だめ」も自分にとってはけい古になるのです、あるいは他人の演技を見ることそのことがそのまま役者の修行になるのです。だから自分一人勝手にけい古するのではなく、塾生同志が互いにけい古する場、それがけい古場なのです。

 

そして、何よりも僕が感動したのは師匠の次の言葉でした。ある塾生が宿題となっていたエチュードをやりました。それはたいした演技ではありませんでした。くる前にちょこちょこっとやって来たようなものでした。

それに対し師匠はすごいけんまくで、

「バカヤロー、いいかげんなことをやってんじゃねえぞ、おまえら自分一人けい古していると思っているかもしれねえが、オレだってけい古してるんだよ、おまえらのけい古見てオレもけい古してるんだよ、適当なことやってんじゃねえぞ!」と怒鳴りました。

 

もちろん僕もその場にいて、師匠が怖かったのですが、それと同時に大変感激しました。養成所の塾長が弟子に向かって、オレだってけい古してるんだというのです。とても謙虚だと思いました。謙虚にまじめに芝居に取り組んでいるのだな、と言うことが分かってとてもうれしく思いました。すごいけんまくで怒鳴るのですごい怖いのですが、でも僕は感激しました。このようにけい古場とは、そこにいるすべての人が互いにけい古しあう場なのです。それは演出家とて同じなのです。

 

そのことがあって以来僕は「けい古場」というものを意識するようになりました。僕が頑張ればそれだけみんなのためになるし、僕が頑張らなければ、やはりそれだけみんなにとってもマイナスになると考えたのです。だから8月以降ずっと下降して行く中で、師匠には一応承認してもらっていたにせよ、他の塾生たちと同等にやって行けなくなるのは辛いことでした。

 

僕のようなものが、互いに互いをけい古しあう場に存在してもよいのか、という疑念が沸いてきました。そして、とうとう11月になって、もはや他の塾生たちと同じことが出来ないと判断したとき、師匠を含めた塾生全員にそのことを言って、それでもなおこの「けい古場」にいてもよいのか、ということを問うことを決意しました。

 

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