22. 絶対現役合格

いじめトラウマを生き抜く方法

過去のいじめで苦しんでいる(いじめ後遺症の)あなたへ。いじめ後遺症うつ病者本人が、自身の、いじめ体験・いじめトラウマ体験・うつ病闘病体験について語ります。いかにトラウマを生き抜くかを考えます。いじめ自助グループ、トラウマ無料スカイプ相談など。

22. 絶対現役合格

引退公演が4月に終わり、いよいよ本格的に受験勉強が始まりました。受験勉強は苛烈を極めました。朝早く起きて登校し授業前に勉強し、授業中も勉強し、休み時間も勉強し、学校が終わってからもすぐに図書館に行き、勉強し続けました。睡眠時間の8時間を除いては、ほとんど勉強していました。その勉強の仕方はほとんど病的でした。わたしは大学現役合格に自分のすべてをかけていたのです。自己の人間の尊厳をかけていたのです。現役合格できるかできないかは、わたしが人間であるかないかの分かれ目でした。わたしは現役合格に自己の人間性をかけていたのです。現役合格だけが、わたしを人間として救い取ってくれる最後の、そして唯一の道だったのです。もし現役合格できなかったら、もうわたしはやっぱり自分をクズと見極めるしかないと考えていたのです。だからどうしても現役合格したかったのです。わたしには浪人は考えられませんでした。現役合格こそが、唯一のわたしの救いとなるものでした。わたしの高校は都立としてはトップだったのですが、大学現役合格率は私立の一流に比べればずっと低く、浪人するのが普通と言った雰囲気に溢れていました。彼らは高3の時点ではあまり緊迫感を持っていませんでした。かえって余裕さえ伺えました。わたしはそういう彼らをはた目で見つつ、

 

「現役で行かない奴はクズだ、現役で行けない奴はダメ人間だ、あいつらみんなクズだ」

 

と呪文のように自分の心の中で何回も反芻(はんすう)しました。現役で行けなかったらわたしはクズになってしまう。わたしはそう思いこんでいたので、どうしても現役で行きたかったのです。それは絶対的な目標でした。失敗の決して許されない目標でした。わたしはそうやって自分を追い詰めながら、それを勉強の原動力として生きていたのです。ある時、わたしは友人にこんなことを言ったことがあります、

 

「僕はダメな奴はどんなに努力してもダメなんだ、ダメな奴はどうあがいてもダメなんだ、ということを証明するために勉強しているんだ。」

 

という風に言ったことがあります。普通ならば自分の実力を実証するために勉強するというのではないでしょうか。しかし、わたしの場合は逆でした。常に自分がクズだということが前面に立っているのです。その前提に立ってわたしは生きていたのです。しかし、本当のわたしの気持ちはそうではなかったのです。「ダメな奴はダメなんだ、ということを立証する」という言葉の裏には、「ダメな奴でも努力すれば何とかなるんだ、もう一度自信をもって生きていきたい」という痛切な思いが、願いが込められていたのです。どんなにダメな奴でも努力すれば報われるんだ、人間としてやって行けるんだ、ということを立証せんがためにわたしは勉強していたのです。しかし、意識の前面に現れてくるのは、オレはクズだということでした。

 

わたしは受験勉強をしながら、こんな風に自分を追い詰めながら生きている自分を見て、「これでもし、現役で行けなかったら、僕は困るだろうな、相当困るだろうな」という考えも頭をかすめることがありましたが、しかし、その想像もすぐに打ち消して「いや、落ちるわけない、これだけ勉強しているのだから、絶対に落ちる訳ないんだ」と自分自身に言い聞かし、また勉強を始めるのでした。

 

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